今回の記事では、シンガポールとクアラルンプールの生活やビジネス面での比較を行います。最近、シンガポールの生活コストが高いため、シンガポールから他の場所に移りたいと考える企業や個人が増えているというニュースもありますので、多くの方がご存知かと思います。
また、日本からシンガポールやクアラルンプール、さらには東南アジア全体を考える際に、どちらを選ぶべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
今回シンガポールのコストや生活環境、仕事に関する情報を現地の日本人や現地の人に関する情報を調査したのでまとめてお届けします。特に、以下の3つの項目についてお話しします。
まずは生活に関する部分、次にキャリアアップのチャンス、最後に事業の拠点としての観点です。皆さんにとって参考になる情報をお届けできればと思います。
生活費の比較
まず生活費についてですが、結論から言うと、シンガポールの生活費の中で特に高いのは家賃です。シンガポールの生活コストで大きな割合を占める住宅費ですが、私の知人である日系企業の駐在員の方が住んでいる家は、80平米の3LDKで家賃が70万から80万円ほどです。
円安が進んでいる影響もあります。同様の環境でクアラルンプールに住む場合、家賃は20万円以下になることが多いです。生活スタイルによっても変わりますが、シンガポールの生活費はクアラルンプールの約4倍になることもあると思います。
家賃が大きな要因ですが、外食についてもシンガポールは物価が高めです。ただし、家賃ほどの差はなく、ファインダイニング(高級レストラン)の価格はシンガポールが1.5倍程度高いという印象です。このように、家賃の差が特に大きいことが一つのポイントです。
シンガポールは全般的に生活費は高いと言われていますが、公共交通機関や利便性に関しては優れています。たとえば、グラブ(配車サービス)は高いですが、道路の構造が整っているため、渋滞が少なく、安定した移動が可能です。
生活の質を考えると、シンガポールのインフラは高い評価を受けています。一方、クアラルンプールは生活費が安いですが、衛生面や安全面においては、ある程度の妥協が必要かもしれません。このあたりが大きな違いになるかと思います。
これが生活に関する最初のポイントです。特に起業を考えている方やオフィスを持ちたい方にとって、家賃の問題は重要な要素となります。
最近、バンコクやクアラルンプールに新たな拠点を設けたり、生活の拠点を移そうとする流れが確実に見られますので、参考にしていただければと思います。
キャリアアップの機会の比較
次に、キャリアアップの機会についてお話しします。シンガポールとクアラルンプールの両国では、いずれも自国の人々の雇用を守りつつ、価値を提供できる人材、特にテクノロジーやサービス、イノベーション分野で活躍できる人にはビザが出やすい状況にあるようです。
シンガポールでは、生活費が高いにもかかわらず、シンガポールでの活躍が期待できる人には相応の給与が支払われるため、挑戦してみたい方には良い機会と思われます。
クアラルンプールでも、企業によってはテクノロジーやサービス分野が拡大しており、MD(マネージングダイレクター)や責任者クラスのポジションで高い給与が提示されることもあります。月給100万円を超える求人も、現地採用者向けだけでなく外国人向けにも存在しています。数は少ないですが、こうしたポジションを狙うこともキャリアアップの選択肢となるでしょう。
特にマレーシアでは、これまでコールセンター系の仕事がビザ取得しやすいとされていましたが、今は新たな機会も増えています。2020年の第1四半期にはGDPが4.5%成長し、専門家の予想を上回る経済成長が見込まれています。半導体産業などの分野での成長も期待されており、高度な人材に対する需要が高まっています。両国ともに、こうした機会を探してみる価値があります。
しかし、給与水準は生活費に密接に関連しているため、どちらが自分にとって適しているかをよく考えながら選択することが重要です。
事業拠点としての比較
最後に、事業の拠点としての観点についてお話しします。ジェトロの調査によると、シンガポールからの地域統括拠点を移転する企業が増えているというデータがあります。2023年は全体の約7%にあたる数百社がシンガポールからの移転を検討していましたが、2024年はその数が31%に増加しています。
このトレンドはマレーシアだけでなく、バンコクなど他の拠点にも及んでいます。事業の特性や目的によって異なるものの、こうした流れは事実です。
特に、シンガポールの高いオフィス賃貸料や人件費が影響しており、コストを抑えるために本社機能をシンガポールに置きつつ、インドネシア市場を狙うために現地にオペレーションチーム(実働部隊や実働組織)を置く企業も増えています。また、シンガポールに本社を置きながらも、マレーシアと連携する形で事業を展開する企業も見受けられます。
シンガポールにオフィスを構え、営業拠点やその他の機能をマレーシアのクアラルンプールに移す企業も増えてきています。シンガポールの人材コストが「100」とした場合、クアラルンプールでは約「23」となり、パフォーマンスはシンガポールの人材の約「33」といった指標で比較されます。このように、マレーシアを活用する企業が増えているのが現状です。
もちろん、シンガポールでしっかり事業を展開できる企業は、税制優遇やその他のインセンティブを活かして、高度な人材を集め、事業機会を広げていくことが可能です。そうした企業にとっては、シンガポールでの活動を続けることもひとつの選択肢です。
今後は、どのように選択していくかが重要な課題となります。シンガポールやクアラルンプールの良し悪しを単純に比較するのではなく、それぞれの特徴を理解した上で、どの選択肢が自分にとって最適かを考えることが求められます。
また、シンガポールとマレーシアの産業連携も進んでおり、どちらが優れているかではなく、地域としての協力が重要視されるようになっています。政府関係者や現地のビジネス関係者との会話からも、その流れが感じられます。
シンガポールが「アウトオブシンガポール(シンガポールから外へ)」と言われる中でも、東南アジアの中で重要な位置を占めており、グローバルな観点でもトップクラスの都市です。クアラルンプールはシンガポールに近く、両者の関係はさらに注目を集めています。シンガポールを補完する形でクアラルンプールを考える企業が増えているのもそのためです。
そのため、ネット上の情報だけに頼るのではなく、実際に両都市を訪れて比較することが重要です。これは、仕事だけでなく、留学や移住、ビザ取得を目指す方にとっても必要なアクションです。
以上この記事ではマレーシアとシンガポールの違いを「生活面」「キャリアアップの機会」「事業拠点」の3点から比較をしてみました。
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